本記事では、上記のような疑問を解決します。
本記事の内容
- EVMとはどんなものなのかが分かる
- EVMでの重要なポイントが分かる
- EVMで気をつけるべき点が分かる
この記事を書いている私は、業界歴10年以上の現役システムエンジニアです。日頃からEVMを使いまくっている私がポイントを纏めてみました。ぜひご覧ください。
システムエンジニアはEVMを理解せよ
EVMとは「Earned Value Management」の略で、プロジェクトの進捗を管理する手法の1つとなります。
アーンドバリュー法とも呼んだりします。
EVMのポイントを理解していくまでに、まずは進捗を管理するときに必要になるものは『何か』ということを考えると良いです。
そうすることで、これから説明していく内容が理解しやすいと思いますので。
なんでもそうですが、小手先のテクニックではなく、物事の本質を理解することが大事です。
進捗を管理するときに必要なこと
進捗を管理するときに重要なことはざっくり2つです。
- 納期に間に合うのか
- コスト(費用・時間)はどれぐらいかかっているのか
上記のとおりです。
例えば、自分が車の車検をお願いしているときを考えてみましょう。「いつ出来上がるのか、費用は見積もりどおり済むのか」気になりますよね。
それと同じことです。ここは全く難しい話ではないですよね。
さて、次からEVMの具体的な話をしていきます。
EVMのポイント【まずはこれを覚えよう】
EVMは定量的に管理していくことになりますので、下記のような数値が登場することになります。
略称 | 名称 | 意味 | 計算式 |
BAC | Budget at Completion | 当初予算 | − |
PV | Planned Value | 現時点までの予定成果 | − |
AC | Actual Cost | 現時点までの実際のコスト | − |
EV | Earned Value | 現時点までの実際の出来高(成果) | − |
SV | Scheduled Variance | スケジュールの予定と実績の差異 | EV – PV |
CV | Cost Variance | コストの予定と実績の差異 | EV – AC |
CPI | Cost Performance Index | コスト効率 | EV ÷ AC |
SPI | Schedule Performance Index | スケジュール効率 | EV ÷ PV |
これらの値を定量的に確認することで、順調 or 問題あり(手当が必要)などを判断することができるのです。
なので、これらについては丸暗記が必須になります。
あまり難しく考える必要はなく、下記にように覚えておけばOKです。
- 『P』が付くと、予定のこと。
- 『S』が付くと、スケジュールのこと。
- 『C』が付くと、コストのこと。
- 『E』が付くと、出来高(成果)のこと。
上記のように考えると難しい話ではないと思います。
また、スケジュール管理するときに気にすることは何か、それに必要になる数値は何かをイメージしながら覚えると良いです。
ケーススタディ①
プロジェクトにおける問題は様々あります。EVMから見えてくる問題点を正しく把握しましょう。
下記のようなケースはどうでしょう。
BAC | AC | PV | EV | SV | CV | SPI | CPI |
100 | 70 | 80 | 60 | -20 | -10 | 0.75 | 0.86 |
とりあえず、「SV、CV、SPI、CPI」に注目しましょう。
SV
SVは-20h(EV:60h − PV:80h)なので、20h分遅れているということです。
※予定(PV)は80h進む予定だが、出来高(EV)は60h分しかできていない。
CV
CVは-10h(EV:60h − AC:70h)なので、10h分余計に時間がかかっているということです。
※実績(AC)は70h稼働したが、出来高(EV)は60h分しか成果が出ていない。
SPI
SPIは(EV:60h ÷ PV:80h)0.75なので、当初のスケジュール(期間)に比べると、1.25倍遅れて完了するということです。
CPI
CPIは(EV:60h ÷ AC:70h)0.86なので、当初の計画(予算)に比べると、1.14倍費用がかかって完了するということです。
ケーススタディ②
では、次のようなケースはどうでしょう。
BAC | AC | PV | EV | SV | CV | SPI | CPI |
100 | 60 | 70 | 80 | 10 | 20 | 1.14 | 1.33 |
同じように、「SV、CV、SPI、CPI」に注目しましょう。
SV
SVは10h(EV:80h − PV:70h)なので、10h分進んでいるということです。
※予定(PV)は70h進む予定だが、出来高(EV)は80h分もできている。
CV
CVは20h(EV:80h − AC:60h)なので、20h分効率よく進捗できているということです。
※実績(AC)は60h稼働したが、出来高(EV)は80h分も成果が出ている。
SPI
SPIは(EV:80h ÷ PV:70h)1.14なので、当初のスケジュール(期間)に比べると、1.14倍のスピードで作業が完了するということです。
CPI
CPIは(EV:80h ÷ AC:60h)1.33なので、当初の計画(予算)に比べると、1.33倍効率よく(費用を圧縮し)完了するということです。
EVMのポイントまとめ
EVMで確認すべきポイントは下記のようになります。
まずはここだけ理解しておけばOKです。
数値(現状)を把握し、理由も把握する必要がある
今回ご紹介したやり方で定量的にプロジェクトの状況を把握することができるようになります。
しかし、その数値になる理由はプロジェクトごとに様々です。
時間がかかってしまっている(CVがマイナスとなる)場合、下記のようなケースが考えられます。
- 予定の工数が足りない(見積が甘い)
- 顧客の言い分が変わり、やり直しが発生している
- 品質が悪く、プログラム修正が多発している。
- スキルアンマッチにより、進みが悪い
他にも色々とありますが、ざっくりと上記のとおり。
EVMによりプロジェクトの状態を見える化することができるようになりますが、「なぜそのような状況なのか」ということを、あらゆる角度から分析していく必要があるのです。
EVMが活躍しない場合あり
最後に、EVMも完璧ではないということを覚えておく必要があります。
なぜなら、予定(見積)や現在の出来高は正確ではない場合があるからです。
具体的には、例えば予定時間が50hのプログラムがあるとしましょう。そのときに、今現在30h分できあがっているのか、40h分出来上がっているのかは正確に把握できない場合があります。
ある程度スキルを持った人間であれば、残りの作業に掛かりそうな時間から逆算し、今現在の出来高(EV)を算出することができますが、若手メンバーの場合にはそうはいかないため、注意が必要です。
また、そもそも予定(見積)が甘い場合には、全く予定通り進まないため、EVMどころではありません。
プロジェクトの遂行には、他のあらゆる要素も正しく行い、進める必要があるということです。